DX研修・AI研修の助成金(人材開発支援助成金)の対象・条件・申請の流れ【2026年度】
AI研修に使える助成金として、まず候補になるのは厚生労働省の「人材開発支援助成金」です。この記事では、対象になる事業主の条件、中小企業が受け取れる額、申請の流れを、2026年10月20日時点で厚生労働省が公開している資料(事業展開等リスキリング支援コースの詳細版パンフレット 令和8年8月3日版 ほか)に沿ってまとめます。
この助成金は、同じ年度の中でも改正が入ります。令和8年度(2026年度)は4月8日と8月3日に改正があり、とくに8月3日の改正で「生成AIの研修なら対象」とは言えなくなりました。古い数字のまま書かれた記事もあるため、申請前には必ず厚生労働省のページで最新のお知らせを確かめてください。
AI研修の助成金は「人材開発支援助成金」が中心
人材開発支援助成金は、従業員に職務に関連した訓練を受けさせた事業主に、訓練の経費と、訓練中の賃金の一部を助成する制度です。厚生労働省のページでは7つのコースに分かれています。
AI・DXの研修で主に使われるのは、次の2つです。
| コース | 主な使い道 | 期間 |
|---|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援コース | 新しい事業やDX化に必要な知識を、社員に研修で身につけてもらう | 令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置 |
| 人への投資促進コース | 定額制(サブスク型)の研修サービス、高度デジタル人材の訓練など | 令和8年度末までの時限措置 |
どちらも「令和8年度末までの時限措置」とされています。2026年10月20日時点で、令和9年度以降に続くかどうかの発表は確認できていません。来年度に研修を予定している場合は、年度が変わる前後の発表を確認してください。
中小企業が受け取れる額(事業展開等リスキリング支援コース)
厚生労働省の詳細版パンフレット(令和8年8月3日版)とリーフレット(令和8年4月8日版)に載っている、中小企業の数字です(2026年10月20日時点)。
| 項目 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 経費助成(研修費のうち助成される割合) | 75% | 60% |
| 賃金助成(受講中の賃金、1人1時間あたり) | 1,000円 | 500円 |
| eラーニング・通信制の経費助成の上限 | 時間数に関係なく15万円 | 10万円 |
中小企業の経費助成には、1人1訓練あたりの上限もあります。
| 訓練時間 | 経費助成の上限(中小企業・1人1訓練) |
|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 30万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 40万円 |
| 200時間以上 | 50万円 |
ほかに、次の決まりがあります。
- eラーニング・通信制には賃金助成がありません。
- 1事業所が1年度(4月1日〜翌年3月31日)に受け取れるのは1億円までです。
- 受講は1人1年度に3回までです。2026年8月3日以降に出した計画届に基づくeラーニングは、1人1年度に1回までです。
助成の可否と額は、管轄の労働局の審査で決まります。表の数字は上限と割合であり、この額が必ず支給されるという意味ではありません。
2026年8月3日の改正 — 生成AI研修でも対象外になるもの
AI研修で助成金を考えるなら、ここが最も大事な点です。2026年8月3日以降に提出する計画届では、DX・GXの訓練であっても、次の2つは助成の対象外になりました(厚生労働省「令和8年8月3日からの変更点」)。
- 職業・職務に間接的に必要な知識・技能を身につける内容
- 職業・職務の種類を問わず、職業人として共通して必要な内容
厚生労働省の資料には、具体例も載っています。
| 例 | 扱い |
|---|---|
| 営業担当者向けに、生成AIで商品提案書の構成案づくり・文章生成・修正方法を学ぶ訓練 | 対象 |
| 生成AIを使うための、汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練 | 対象外 |
| DXの概念やデジタル技術の概要、データ活用の考え方を学ぶ訓練 | 対象外 |
つまり、対象になるかどうかは「生成AIを扱うかどうか」では決まりません。誰の、どの業務にそのまま使う内容かで決まります。研修を選ぶときは、カリキュラムに受講者の業務での使い方が具体的に書かれているかを確かめてください。
なお、計画届を8月3日以降に出す場合でも、訓練の契約や申込が8月2日以前に済んでいれば、改正前の取り扱いが適用される場合があります(詳細版パンフレット)。該当しそうな場合は労働局に確認してください。
AI研修で助成金を使える条件 — 法人と個人事業主
対象になる事業主
対象は「雇用保険適用事業所の事業主」です。研修を受ける人は、その事業所の雇用保険の被保険者である必要があります。法人か個人かで、この条件は変わりません。
中小企業かどうかの判定には個人の事業主も含まれていて、資本金のない事業主(個人など)は、常時雇用する労働者の数で判定します。
個人事業主の場合
従業員を雇い、雇用保険に加入している個人事業主は、上の条件に当てはまり得ます。
一方で、従業員が1人もいない個人事業主は、事業主本人が雇用保険の被保険者ではないため、研修を受けさせる対象者がいないことになります。この場合は使えない可能性が高いと考えられます。ただし厚生労働省の資料に「個人事業主は可・不可」と直接書かれた箇所は見つけていないため、これは資料からの読みです。迷ったら管轄の労働局に確認してください。
事前に済ませておくこと
計画届を出す日までに、次の2つを済ませておく必要があります。
- 職業能力開発推進者(社内で訓練を進める担当者)を選ぶ
- 事業内職業能力開発計画(社員の育成方針)を作り、社員に周知する
研修そのものの条件
- 通常の業務と区別して行う研修(OFF-JT)で、実際の訓練時間が10時間以上あること。eラーニング・通信制は、標準学習時間が10時間以上か、標準学習期間が1か月以上であること。
- 内容が、新しい事業に必要な専門知識、社内のDX化・GX化に関わる業務の専門知識、人材育成計画に沿った将来の職務の専門知識、のいずれかに当たること。
- 会場に集まる研修と、ライブ形式のオンライン研修(講師にその場で質問できるもの)は、訓練時間の8割以上を受講すること。
- 研修中も賃金を適正に払うこと。eラーニングでも、業務として受けさせる以上は賃金が必要です。
10時間以上という条件があるため、半日(3〜4時間)の研修を1回だけ受けても、この助成金の要件は満たしません。
AI研修の助成金の申請の流れ
事業展開等リスキリング支援コースの、おおまかな流れです。
- 事前準備 — 職業能力開発推進者の選任と、事業内職業能力開発計画の作成・周知。
- 計画届の提出 — 訓練を始める日の6か月前から1か月前までに、管轄の労働局へ提出します。研修の日程が決まったら、逆算して早めに動く必要があります。
- 研修の実施と支払い — 研修を行い、受講中の賃金を払います。支給申請までに、研修費の全額を事業主が支払っておく必要があります。助成金はあとから受け取る形です。
- 支給申請 — 訓練が終わった日の翌日から2か月以内に申請します。期限を過ぎると支給されません。
- 審査・支給 — 労働局の審査を経て支給が決まります。
申請前に知っておきたい注意点
厚生労働省は、詳細版パンフレットや改正のお知らせ(リーフレット)で、次の点を注意しています。
- 「実質無料」「助成金で利益が出る」という勧誘は不適正です。 制度の仕組み上、そうはなりません。受講料の負担を実質的に減らす協力金やキャッシュバックがあると、経費助成は対象外になります。
- AIツールの導入費は対象外です。 AI研修とAIツール導入をセットにして、ツール代を研修費として申請することはできません。
- 申請書の作成・提出を報酬を得て代行できるのは社会保険労務士だけです。 研修会社が「無償で代行」と言っていても、その費用が受講料に含まれていれば問題になります。
- 関係の近い相手との研修は対象外です。 代表者の親族、親会社・子会社、代表者が同じ教育訓練機関などに払う研修費は、経費助成の対象になりません。
また、2026年5月14日の支給要領の改正で、受講料などの価格設定についての疎明書(様式第28号)が一部の申請で必要になったと告知されています。どの申請で必要になるかは、労働局に確認してください。
ほかのコースも検討する場合
- 人への投資促進コース — 定額制(サブスク型)の研修サービスを使う場合、中小企業は経費の60%、1人1か月2万円が上限、1人1年度に3回までです(同コースのリーフレット 令和8年4月8日版)。計画届は訓練開始の1か月前まで、支給申請は修了日の翌日から2か月以内です。
- 人材育成支援コース — 時限措置ではないコースです。職務に関連した10時間以上の研修が対象で、AI研修が当てはまるかは、研修の内容と受講者の職務の関係で個別に決まります。
どのコースが合うかは、研修の形式と内容で変わります。迷ったら、研修の内容と受講者の職務が分かる資料を持って、管轄の労働局に相談してください。
次にすること
助成金を使ってAI研修を行うなら、次の順で確かめると迷いにくくなります。
- 自社が雇用保険の適用事業所で、受講させたい社員が被保険者かを確かめる。
- 受講者の業務と、研修で扱う内容を書き出す。「どの業務に、どう使うか」を説明できるかを見る。
- 研修が10時間以上あるか、形式(会場・ライブのオンライン・eラーニング)は何かを確かめる。
- 研修開始日から逆算して、1か月前までに計画届を出せる日程か確かめる。
- 厚生労働省のページで最新のお知らせを見て、不明点は管轄の労働局に問い合わせる。申請手続きを外部に頼む場合は社会保険労務士に相談する。
Texera のAI研修について
Texera の体系プログラム(1日6時間×2日・1社単位)は、受講者の業務に合わせて内容を組むため、助成金の対象になる場合があります。対象になるかは労働局の審査で決まりますが、計画届に必要な研修内容や時間数の資料づくりには協力しますので、日程を決める前にご相談ください。
参考
- 厚生労働省 人材開発支援助成金のページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
- 厚生労働省 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)詳細版パンフレット(令和8年8月3日版) https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf
- 厚生労働省 事業展開等リスキリング支援コース リーフレット(令和8年4月8日版) https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001687619.pdf
- 厚生労働省 事業展開等リスキリング支援コース 令和8年8月3日からの変更点 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731966.pdf
- 厚生労働省 人材開発支援助成金 令和8年4月8日の改正(全コース共通)リーフレット https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001687558.pdf
- 厚生労働省 人への投資促進コース リーフレット(令和8年4月8日版) https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001687616.pdf
(いずれも2026年10月20日に確認)